血友病の遺伝子治療の臨床試験が二件成功
遺伝子治療は現実のものへ?
Nature medicineに以下の記事が掲載されています。
Gene therapies for hemophilia hit the mark in clinical trials
https://www.nature.com/articles/nm.4492
Nature Medicine 24, 121–122 (2018)
doi:10.1038/nm.4492
Two recent studies describe clinical successes for single-dose gene therapy in trials for two forms of hemophilia.
一回の投与で、血友病の治療効果が認められたようです。
どこに課題があったのか?また効果は?
血友病A
補うべきタンパク質であるFactor VIIIが大きいため、効率的に発現させるのが難しかったそうです。それをRangarajanらが、
- コドンオプティマイズし、
- truncatedのfactor VIIIを用い、
- 肝臓特異的なプロモーターを使う
ことで、解決したみたいですね。三点目は低発現の補強というよりは、安全性の観点からのように読めますが。
9人に投薬され、重篤な副作用は1人のみ。遺伝子を封入するのにつかっているAAVに対して免疫応答が出た結果、もともと持っていた持病の関節症が悪化したと考えられているようです。
7人のhigh dose群の患者さんすべてが、一年後でも一定のfactor VIIIの血中濃度を維持している、というのはさすが遺伝子治療といったところでしょうか。
血友病B
補うべきタンパク質であるFactor IXに対して、
- コドンオプティマイズと
- 肝臓特異的なプロモーターに加え、
- natural mutationであるR338Lを導入
しています。この変異は、活性増強につながる変異のようです。
こちらは10人に投薬され、重篤な副作用の報告はなく、78週後でも高いFactor IXの発現量を保持しているそうです。出血の症状も有意に抑えられているとのこと。
ゲノム編集技術との組み合わせは?
当然、期待は膨らみますが、Factor VIIIの全長発現すら難しい現状を考えると、ハードルは高いように思いました。ただ、道はでき始めているので10年後くらいには徐々に実用化されていそうに思いました。一方、肝臓以外の臓器に、効率的に遺伝子を届けるにはまだハードルがアリそうにも思います。このあたりが、どの程度実現できるのか、今後楽しみな分野です。